コンピューターへの攻撃を防ぐためのセキュリティソフト。
製品数が多く、どの製品も優位性をアピールしていることから、
違いが分かりづらいことがあります。
そこで第三者評価機関の出番です。
複数の独立した評価機関が、セキュリティソフトの性能を客観的に評価しており、
その結果がインターネット上で公開されています。
各機関による評価は、きっとセキュリティソフトを選ぶ際の一助となるはずです。
目的
この記事は、個人向けセキュリティソフトの第三者評価機関の6つについて、
次の3点をまとめることを通して、満足できる製品の選択に貢献することを目的としています。
- 対応プラットフォーム
- 特長
- 評価結果の閲覧方法
セキュリティソフト評価機関6選
選定条件
本記事では、世界に存在するセキュリティソフトの評価機関のうち、
次の条件を満たす6つの機関を紹介します。(順不同・敬称略)
- 個人向けのセキュリティソフトを対象としていること
- Windows、MacOS、Androidの1つ以上を、評価対象のプラットフォームとしていること
- サイバーセキュリティ業界のテスト標準化団体であるAMTSOに加盟していること
ただし、ご紹介する機関は完全に網羅的なものではありませんことをご容赦ください。
各機関とOSの対応表
次の表では、以降で紹介する各機関と評価対象のOSとの対応関係を示しています。
表の ◯ は、その行の評価機関がその列のOSを対象としていることを、
– は対象としていないことを表しています。
評価機関 | Windows | MacOS | Android |
---|---|---|---|
AV-TEST | ◯ | ◯ | ◯ |
AV-Comparatives | ◯ | ◯ | ◯ |
AVLab Cybersecurity Foundation | ◯ | – | – |
MRG Effitas | ◯ | – | ◯ |
SE Labs | ◯ | – | – |
Virus Bulletin | ◯ | – | – |
※本サイトでは上記の条件で、Linux、iOSまたはiPadOSを対象とした評価機関は
見つけることができませんでした。
なお、本記事の情報はセキュリティソフト評価機関の業界団体であるAMTSOの情報を参考としています。
AMTSOのページでは、加盟機関が発行するAMTSO規格準拠テストの検索機能を含む、様々な情報が掲載されています。
AV-TEST
公式トップページ(英語):https://www.av-test.org/en/
特長
- 評価一覧・結果のページが豊富な図で見やすい
- 対応プラットフォームが幅広い
対象プラットフォーム
AV-TESTは、次のプラットフォームを対象とした評価を行っています。
- Windows
- MacOS
- Android
AV-TESTのテスト結果を閲覧するには、公式ページにアクセスし、
「Test for home users」の枠内(画像左下)から閲覧したいOS名が書かれたリンクをクリックします。
リンクの例:Windows Antivirus
最新のテスト結果における製品別の要約が表示されます。
ここから、詳しい結果を確認したい製品の項目をクリックすると、観点別の詳細な評価結果が閲覧できます。
過去の結果を閲覧したい場合は、製品のリストの最下部までスクロールして見つかる「Archive >>」と書かれたリンクをクリックします。
過去の結果へのリンク集が閲覧できます。
AV-Comparatives
公式トップページ(英語):https://www.av-comparatives.org/
特長
- 複数の製品の評価点が一つの表にまとまっているため、比較が容易
- 対応プラットフォームが幅広い
- ISO 9001:2015 および EICAR Minimum Standards 認定取得の評価機関
対象プラットフォーム
AV-Comparativesは、次のプラットフォームを対象とした評価を行っています。
- Windows
- MacOS
- Android
AV-Comparativesのテスト結果を閲覧するには、まず公式サイトにアクセスし、
「CONSUMER」の枠内をクリックします。
ヘッダーの「Test Results」をクリックします。
テスト結果の一覧が表示されます。このページから公開されている全てのテストにアクセスできます。
ここでは例として、Windows環境でマルウェアの検知力を測定したテストの閲覧手順を示します。
AV-Comparativesでは、テストは検知力・パフォーマンスなどの観点ごとに実施されています。
現在の状態では、全OS・全観点のテストが表示されているため、左部または上部にある「Filter」欄からOSおよび観点の絞り込みを行います。
ここでは、Windowsでのテストに絞り込みたいので、Filter内「Platforms」リストのMicrosoft Windowsの項目にチェックを入れます。
また、目的のテスト1種類に絞り込むために、「Test Methods」リストのSelect all/noneのチェックをクリックして外します。
「Test Methods」リストの「Real-World Protection Tests」にチェックを入れます。
※AV-Comparativesでは、マルウェアに対する総合的な防御性能のテストは「Real-World Protection Tests」と呼ばれています。
これで、リスト項目がWindowsでのマルウェア防御テストに絞り込まれました。
ここから、テスト結果を閲覧してみます。
結果には、観点横断のベンダー別ページと、特定観点の製品別ページの2種類があります。順に閲覧手順を示します。
まず、ベンダー別の結果ページへのアクセス手順です。
はじめに、リスト項目の製品名部分をクリックします。
クリックしたベンダーの評価ページが表示されます。
次に製品別の評価ページを表示します。
先程のリストのページに戻り、リスト項目のテスト名をクリックします。
クリックしたテストの評価ページが表示されます。
下にスクロールすると、Summary Result(結果の要約)の見出しに続けて、
対象製品の検知率を示したグラフが閲覧できます。
AVLab Cybersecurity Foundation
公式トップページ(英語):https://avlab.pl/en/
概要・特長
- 全製品が1ページにまとまった評価結果
- 各製品についてマルウェアの実行前ブロック・実行後ブロックの割合を公開
- 攻撃の処理時間を公開している
対象プラットフォーム
AVLab Cybersecurity Foundationは、次のプラットフォームを対象とした評価を行っています。
- Windows
AVLab Cybersecurity Foundationのテスト結果を閲覧するには、まず公式サイトにアクセスし、ヘッダーメニューから「TESTS」をクリックします。
メニューが展開されるので、「recent results」をクリックします。
最新結果のページが表示されます。
スクロールして見つかる「Malware Comparison Table in ~」の見出し以下の図が、評価結果を表しています。
結果を読み取る際は、先の見出し直後の説明文を参照すると理解が深まります。
過去の結果の閲覧
結果の下にスクロールすると、「See the previous results」の見出しがあります。
この見出し下にある、リンクから過去の結果を閲覧することができます。
結果によっては、最新のものと形式が異なる場合があるため、結果ページの上部にある説明文を熟読することをおすすめします。
MRG Effitas
公式トップページ(英語):https://www.mrg-effitas.com/
概要・特長
- 詳細に分類された検出評価
- PDF形式のレポート
対象プラットフォーム
MRG Effitasは、次のプラットフォームを対象とした評価を行っています。
- Windows ※企業向けのみ(訂正)
- Android
MRG Effitasのテスト結果を閲覧するには、まず公式サイトにアクセスして、ヘッダーから「Tests」をクリックします。
最近のテスト一覧のページが表示されます。
次にリスト項目を閲覧したいOS別に絞り込みます。
「Certification」をクリックして、Androidのテストを閲覧したい場合は「Android」を、
Windowsのテストを閲覧したい場合は「360 Assessment」をクリックします。
これでリスト項目が絞り込まれました。
テスト結果は各項目の日付の下にある「Read Report」をクリックすることで、すぐにPDFファイルとして開かれ、閲覧できます。
SE Labs
公式トップページ(英語):https://selabs.uk
概要・特長
- ISO / IEC 27001 : 2013 および BS EN ISO 9001 : 2015 取得の評価機関
- PDF形式のレポート
対象プラットフォーム
SE Labsは、次のプラットフォームを対象とした評価を行っています。
- Windows
SE Labsのテスト結果を閲覧するには、まず公式サイトにアクセスし、ヘッダーメニューから「REPORTS」をクリックします。
最近のテスト結果の一覧が表示されます。
次に、一覧の項目を個人向けソフトの結果に絞り込みます。
ページ左側にあるFiltersのTypesリストをクリックして展開します。
※Filtersが見つからない場合は、「Our Reports」の見出し右にある三本線アイコンをクリックすることで表示できます。
展開したTypesリストからConsumerのチェックボックスにチェックを入れます。
これでリストが個人向けソフトの結果に絞り込まれました。
リストは最新のものから降順に並んでいます。
テスト結果のページは各項目のタイトルをクリックすることでアクセスできます。
ページをスクロールすることで、埋め込みのGoogle ドキュメントで開かれた
テスト結果が見つけられます。
読み込みが終わらない場合や、閲覧しにくい場合は、PDFファイルの表示部分のすぐ下にある「download」のリンクをクリックすることで、
直接PDFファイルをダウンロードすることができます。
Virus Bulletin
公式トップページ(英語):https://www.virusbulletin.com/
概要・特長
- 1998年から実施されている歴史ある「VB100」テストの実施機関
- 「VB100」は、悪意あるWindows実行ファイルの即時検知(実行後の振る舞い検知でない検知)に特化したテスト
対象プラットフォーム
Virus Bulletinは、次のプラットフォームを対象とした評価を行っています。
- Windows
Virus Bulletinのテスト結果を閲覧するには、まず公式サイトにアクセスして、ヘッダーから「VB Testing」をクリックします。
「VB100」または、その下の「VB100 certified products」の見出しをクリックします。
VB100テストの評価結果が表示されます。
このページに「VB100 CERTIFIED」の枠で記載されている製品が、現時点でVB100認定を取得している製品です。
まとめ
この記事では、納得してセキュリティソフトを選択できるようになることを目標として、
個人向けセキュリティソフトの第三者評価機関を紹介してきました。
各機関の結果をご覧になるとお気づきになるかもしれませんが、
評価機関が異なると検知率の高いソフトウェアも変わってきます。
複数機関の結果を活用するために、本記事が参考になれば大変幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
追記事項
- お詫びと訂正:MRG EffitasはWindows向け個人用製品の評価を公開しておりませんでした。この場を借りてお詫びして、訂正いたします。(2024/09/24)
- 本記事は2019年公開の記事を2024年9月に大幅増補の上、更新したものです。
出典
記事中の、
- 「各機関と評価対象のプラットフォームとの対応」を示した表
- 各機関の「対象プラットフォームと評価内容」の項
は、以下の外部ページの内容を参考にしています。
- AV-TEST:https://www.av-test.org/en/antivirus/home-users/
- AV-Comparatives:https://www.av-comparatives.org/faq/
- AVLab:https://avlab.pl/en/faq/
- MRG Effitas
- https://www.mrg-effitas.com/wp-content/uploads/2024/03/MRG_Effitas_360_Q4_2023.pdf
- https://www.mrg-effitas.com/services/endpoint-protection-testing/smartphone-security-testing/
- 補足:MRG Effitasの公式ページでは、MacOSを評価対象としたテストも実施しているとの表記があります。しかし、本サイトでは公開が確認できなかったため、本記事には表記していません。
- SE Labs:https://selabs.uk/wp-content/uploads/2023/11/Endpoint-anti-malware-testing-methodology-1.21.pdf
- Virus Bulletin:https://www.virusbulletin.com/testing/vb1001/vb100-methodology/vb100-methodology-ver15/
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